ほぼ連載小説 マスカレード vol.38(2008.7.25)

「人が犬を散歩させているのか、犬が人を散歩させているのか。」またあの声だ。
「そうですね。犬の声が聞こえるとよく解りますね。」僕は心で答えた。
「人間が動物の声が聞こえたら、殺さないだろうな。」
「ええ。殺せないと思います。」
「ちょっと、あなた! 私の買い主にも言ってちょうだい。こんなダサイ服着さされて。近所の犬仲間でいい笑い者だわ。」
 ミニチュアダックスを連れた人とすれ違った。考えてみれば犬に着せる服は人間が選んだもの。けっして犬の意思ではない。
「買い主がいるだけ、まだましだね。」1匹の黒い猫が近づいてきた。
「そう?」僕は心で聞いた。
「僕も昔は飼い猫だったけど、捨てられちゃって。別に恨んでるわけじゃないけど・・・・・。幸せだった日々を、時々思い出す事があるよ。」
「でも買い主もやむえずに手放したのでは?」僕は心で聞いた。
「どうだろう。そこはよく解らないんだ。」
「手放すくらいだったら飼うなよ!」道路の横の溝にフェレットがいた。
「フェレット? 自然にいるわけないよね?」
「当たり前だろ。ペットとして売られ、あげくに捨てられた。今はこのとおり野良フェレットだ。」
「しかし、よく生きていけますね?」僕は心で聞いた。
「ああ。何とか生きてるよ。餌は適当にあるし、天敵も少ない。猫は大丈夫なんだが、最近野良アライグマが増えて困っているんだ。あいつらは襲ってくるから。頼むから何とかしてくれよ。」
「はあ。」

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